広報予算ゼロでも戦える|旅館広報担当が実践する「メディアを動かす企画術」

先日、ある広報の方が書かれた記事を読みました。

「広報の予算がない」と言われてからが本番——そんな内容で、読んでいてとても共感しました。

私が担当している旅館も、広告予算はほぼかけない会社です。「テレビCMを打とう」「大手メディアに広告を出そう」という選択肢は、現実的にありません。

でもだからこそ、「お金をかけずにメディアに宣伝してもらう」という発想で動いています。今回はその実践についてお伝えします。


広告からの流入は正確に追えない

まず正直に言うと、広告を出したとしても、その効果を正確に測定することはとても難しいです。

「このCMを見て来ました」「この雑誌広告を見て予約しました」と言ってくれるお客様は、実際にはほとんどいません。旅館の予約経路は複雑で、「SNSで見て、じゃらんで調べて、口コミを確認して、予約した」というように複数のタッチポイントを経由します。

広告を出しても「それが直接予約につながったか」を追うのは非常に難しいのです。

だとすれば、広告費をかけることへの費用対効果を証明することも難しい。限られた予算の中で、より確実に効果が期待できる方法にリソースを集中する——それが私の考え方です。


「メディアが来たくなる企画」を作ることが広報の仕事

広告費をかけない代わりに私が力を入れているのが、「メディアが取材に来たくなる企画を作ること」です。

メディアに取り上げてもらうことができれば、広告費ゼロで全国に情報を届けることができます。しかも広告と違い、メディアが「ニュースとして価値がある」と判断して取り上げてくれるので、読者・視聴者からの信頼度が高い。

旅館の場合、季節ごとに「メディアが使いたい絵」があります。

  • 冬なら「雪景色の温泉」「こたつと鍋料理」
  • 春なら「桜と旅館の風景」「山菜料理」
  • 夏なら「涼を感じる川床料理」「花火と浴衣」
  • 秋なら「紅葉と露天風呂」「きのこ料理」

これらをただ「やっています」と発信するだけでは弱い。「なぜ今、この旅館でこの体験が特別なのか」というストーリーをプレスリリースに乗せることで、メディアが「視聴率が取れる」と感じる企画になります。

例えば冬であれば、「雪が積もった露天風呂」という映像は絶対にテレビ向けの絵になります。そこに「地元の猟師から仕入れたジビエ料理」や「地元の農家とコラボした温野菜」というストーリーを加えることで、食・観光・地域貢献という複数のフックが生まれ、メディアにとって使いやすいネタになります。


うまくいかない企画の方が多い(失敗談)

ここまで書いておいて正直に言いますが、うまくいかない企画の方が圧倒的に多いです。

「これは絶対メディアに刺さる!」と思って作ったプレスリリースが、全く反応されなかったことは何度もあります。

失敗の原因として感じているのは以下のようなことです。

① タイミングが悪かった せっかくの企画も、大きなニュースが重なった時期に出してしまい、埋もれてしまったことがありました。

② ストーリーが弱かった 「季節の料理が始まりました」という発信だけでは、メディアにとって「それで?」となってしまいます。なぜその料理なのか、誰が作っているのか、どんな想いがあるのか——ストーリーが薄いと取り上げてもらえません。

③ メディアの「欲しい絵」と合わなかった テレビは映像が命です。「文章で伝えたいこと」と「映像で伝えられること」が一致していないと、テレビ局には刺さりません。

失敗を重ねながら、「どんな企画がメディアに刺さるか」という感覚を少しずつ磨いています。


それでも企画を作り続ける理由

うまくいかない企画が続くと、正直心が折れそうになることもあります。

でも続ける理由が一つあります。

一度メディアに取り上げてもらえたとき、広告費では買えない信頼と認知が生まれるからです。

旅館のお客様が「テレビで見ました」「雑誌に載っていましたよね?」と言ってくださるとき、そのお客様は「信頼できる施設」というフィルターを通して来てくださっています。広告を見て来たお客様とは、入口での信頼度が違います。

だから、うまくいかない企画があっても、次の企画を考え続けることをやめられません。


大切にしていること

予算がない中で広報を続けるうえで、私が大切にしていることが一つあります。

「広告費をかけないこと」をデメリットと捉えず、「メディアに動いてもらう企画力を磨く機会」と捉えることです。

広告費があれば「お金でメディアを買える」かもしれません。でもお金がないからこそ、「メディアが自ら取り上げたくなる企画」を作る力が鍛えられます。

この力は、予算ができたときにも必ず活きます。むしろ予算がない今だからこそ、本質的な広報力が磨かれていると感じています。


まとめ

  • 広告からの流入は正確に追えないのが現実
  • だからこそ「メディアが来たくなる企画」を作ることが広報の仕事
  • 旅館の季節ネタ×ストーリーで、メディアが使いやすいネタを作る
  • うまくいかない企画の方が多いが、続けることで企画力が磨かれる
  • 予算がないことをデメリットではなく、広報力を磨く機会と捉える

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